こんな時代だ。 誰かに執着するなんてこと、ないと思ってた。 「おめぇ、俺のこと好きなんだろ?」 「は?何くだらないこと言ってんの?あんた、ついに頭湧いた?」 息が上がる。 周りは敵だらけ。 背中合わせの俺と、おまえ。 危機的状況なのに、悪い気はしない。 むしろ、楽しくて仕方なくてこんなことも言ってしまえる。 いつもどおり、俺をあしらう様に返事を返してくるこいつも、同じこと思ってるんじゃないか。 敵が剣を振り下ろす。 それをヌンチャクで巻き取って軌道を外すようにしてかわし、敵の後ろに回りこむようにして蹴りを繰り出す。 俺にはできない、舞いでも踊っているかのような動き。 「へっ!後でちゃんと聞かせてもらうからな!凌統!!」 「今でも聞かせられるけど?あんたなんか、好きじゃないっつの!」 俺も負けられず、大ぶりの剣を振り下ろす。 後に残ったのは、たくさんの死体と、血の海。 顔にへばりつく返り血を拭った。 「なんとか、終わったな」 「へぇ、あんたでも疲れることがあるんだね?」 「涼しい顔しやがって…おめぇも息上がってるぜ?」 「お互い様、ってね」 そう言うと、珍しく俺の横に腰を下ろす。 「さっきのことだけど…」 「あぁ?俺のこと言うくせに、あんたもそーとー!しつこいね…」 「『嫌い』って言わなかったからな。俺のこと、嫌いじゃないってことだろ?」 「な?」って笑うと、恥ずかしそうに顔を反らした。 「…でも…好きじゃ、ない…」 ぼそっと言う声が、なんだか愛しく聞こえる。 気づくと、俺を憎んでたハズのあいつが傍にいた。 戦場で背中を預けられるようになった。 俺のこと、嫌いではなくなった。 それで十分過ぎるハズなのに、その向こうを求めてしまう。 それでも、強がりなお前は、なかなか俺の欲しい言葉をくれない。 誰かにここまで執着するなんて、思ってもみなかった。 強がりなお前と、我が侭な俺。 満足できる距離まで近づけるには、まだまだ時間がかかりそうだ。 ************************************************************************************* 結構前に載せた『2つのお題』の続きです。 どうしても甘寧がおバカな子にならない…。 配布サイト: LIDお題配布サイト |